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今年の夏は"平成最後の夏"という言葉をよく聞きました。
特に我々世代にとって平成が終わるというのはなかなか思うことがあるというか、テンションが上がってしまうのもわかる気がします。
例に漏れず自分も「なにかしなければ!」と思ったわけですが、フェスやキャンプなんてあまり気が進まない。
インドア派な自分にできること。夏らしいことはなんだろうと考えて考えた末に辿り着いたのが"自由研究"です。
そこで【夏休みおとな自由研究】などという企画を静かに、極めて個人的に立ち上げ、恐竜をテーマにシコシコと本を読み漁っていたのでした。
1年ぶりのブログ投稿は、この自由研究の研究報告となります。
図鑑や本をたくさん読みました。勉強しました。
思いっきり知識をひけらかしたい。そんな気持ちでいっぱいなんですが
職業上、繁忙期真っ只中(Tシャツ屋さんなので)ということで、
我ながら「やっとる場合か」という感じが2ミリくらいあるので、今回は恐竜の基礎的な知識に焦点を絞った研究報告にしました。
これを読めば、
自分の子ども。友達の子ども。甥っ子姪っ子。学校の教え子。お隣のケイイチ君。お向かいのアカネちゃん。その他大勢いる恐竜キッズ達の素朴な疑問にサラッと答えて、大人の威厳を保つことができるでしょう。
第1章
【恐竜の基礎】
恐竜ってなんとなく知ってるけど、どんな生物?と聞かれたらちょっと困る。そんな方も多いと思います。
「デカイ。コワイ。ムカシノイキモノ。ゼツメツ。」
ぐらいの簡単なワードしか出てこないですよね。
認知度に対して理解度が低い。それが恐竜です。
その謎の多さ故に、架空の生物感すら漂う恐竜。
でも地球に実在していた生物です。
恐竜ってなんぞや。まずはその辺りを説明していきましょう。
恐竜が誕生したのは今から2億3000万年前。
絶滅したとされるのが6千600万年前なので、
実に1億7000万年もの間、恐竜は地球を支配していました。
この大恐竜時代を《中生代》と呼びます。
ちなみに我々が今生きている時代は《新生代》。
その中で人類は誕生してから700万年だそうです。恐竜はめっちゃ先輩。
そんな恐竜は"陸棲生物史上最も長く繁栄した生物"です。
生物学的に言えば《爬虫類》となります。爬虫類。
でもちょっと条件があって、
《《《体から足が地面にまっすぐ伸びた爬虫類》》》
のみを恐竜と呼びます。(これ大事!!)
この条件に当てはまらなければ、どんなに見た目が恐竜っぽくても恐竜ではありません。
例えばワニやトカゲ。見た目はとても恐竜っぽいですが、画像の通り足が体の横から生えているので、恐竜ではありません。
ワニも恐竜も分類は爬虫類ですが、全く別の方向に進化をしていったのです。
陸上を早く動けるように進化した結果、こんな感じに。
恐竜(セブンイレブン)
↖
ワニ(ヨーカドー) ← 爬虫類(セブン&アイ)
↙
トカゲ(そごう)
みたいな感じで覚えてください。
でも恐竜の名前によく付く《サウルス》ってトカゲって意味なので、学者側からややこしくしてんじゃんって感じ。
ちなみにこんなややこしい名前を付けちゃったのは、200年前にイギリスで世界初の化石を見つけたウィリアム君。
「デカい爬虫類見つけた!多分トカゲの仲間!メガロ(でかい)サウルス(トカゲ)って呼びます!決定!」
この見切り発車な発言が、まさか200年後の現在まで影響を及ぼすとは本人は夢にも思わなかったでしょう。
やっちまったウィリアム君
話を戻します。恐竜かどうか、もっと判断が難しい案件として、
翼とくちばしが特徴のプテラノドンや、
映画『のび太と恐竜』のピー助(フタバスズキリュウ)が挙げられます。
この2頭は《翼竜》と《首長竜》に分類され、現在は絶滅しています。南無。
フタバスズキリュウのピー助
~第2章~
【仮説だらけ!?恐竜のあれこれ】
恐竜ってどんな生物のことを言うのか、ざっくりとおわかりいただけたでしょうか。
巨大な生物は全部恐竜!ではなく、結構細かく分類されていたんですね。
特にプテラノドンが恐竜じゃないのはビックリでした。これはドヤ顔情報。
さて、そんな恐竜達はご存知の通り《化石》となって発見されます。
岩に恐竜の骨がベターっとなっている感じを想像すると思いますが、
実はこれ、厳密に言えば骨ではなく"骨が岩と一体化したもの"なのです。
骨がどうやって化石になるのか、これだけ科学の進んだ現代でもはっきりとわかっていないらしく、
ウン千万年の間になんやかんやで化石になったっぽい。ということ以上はなにも言えないのです。
恐竜の死骸(骨)に含まれるカルシウムが、岩石や地層の成分に置き換わっていくのだろう。というのが大方の見方なんだそうですが、
でも、じゃあどうやって置き換わるのか。これがわかっていない。
しかも、1971年に別々の恐竜2頭が格闘している瞬間の化石が見つかったことで、なんらかの形で瞬間的に化石化した可能性を語る学者も出てきたとか。非常にロマンがあります。
(※現在は否定されています)
ヴェロキラプトルとプロトケラトプス の《格闘化石》
突然の砂嵐にあったと推測されています。
そんな謎に満ちた恐竜の化石。
発掘自体は難しいものではなく、世界中いたるところで日々発見されています。
でも、全身クッキリの化石なんてものはまず出てこない。尻尾の先だけとか。歯だけとか。
恐竜は現存しないので、基本的に学者達は化石からしか情報を得られません。
本当に限られた僅かな情報から特徴を見つけ出し、考察し、論文にし、世界に発表をしているわけです。
ということは、あらゆる図鑑に載っている恐竜達の姿・情報は"全て仮説"だということになります。
全身の化石が見つかっている恐竜でさえ、肉付けは想像でやっていくしかない。なんせ骨しか見ていないので。
フクロウの剥製と骨格標本。
ご覧の通り骨だけで実際の姿を想像するのは難しい。
「手の化石しか見つかってないけど、全身こんな感じかな~」
で図鑑に載っている恐竜がいたり、
「A恐竜とB恐竜、別々の恐竜って言ってたけど、実は大人と子供ってだけでした。ごめん。B恐竜消して全部A恐竜って呼びます!」
なんてことも。
見つかった腕だけの化石から復元されたデイノケイルス
恐竜のあの地味な色味も、
「基本は保護色だったにちげえねえ。」
という、現存する動物の生態に基づいた仮説です。
赤や水色、市松模様やスケルトン。OJICO。そんな恐竜がいた可能性もゼロではないのです。
さらに、映像作品で当たり前のように聴いている鳴き声も仮説です。
ジュラシックパークに出てくる恐竜の王様ティラノサウルスの声は、犬・ペンギン・トラ・ワニ・ゾウをミックスして作ったもの。
同じく劇中のラプトルの声は交尾中の亀だそうです。
「ラプトルの声は交尾中の亀にしよう!(寝てない)」
「よしそれでいこう!(寝てない)」
特徴的な頭部の形状から、鳴き声が判明している唯一の恐竜、パラサウロロフス。
断定されている要素がほとんど無い分、好きなだけ想像を巡らせられるのが恐竜の良いところと言えるかもしれません。
世界初の化石が発見されてまだ200年弱。これからも驚くような発表が続いていくことでしょう。
~第3章~
【恐竜は今も生き続けている】
あなたの心の中で……。じゃなくて、恐竜は本当に今も地球にいます。ほんとだよ!
恐竜は『鳥』に進化をしました。カラスとかニワトリとかのあの鳥です。
進化の過程を簡単に表すと、
《爬虫類→恐竜→鳥類》
みたいな感じ。鳥類もずっと元を辿れば爬虫類だったわけです。
さてこの説、実は恐竜ガチ勢からすると当たり前の認識となっています。
砂糖は甘い。コーヒーは苦い。ニューデイズはランチパックの種類がハンパじゃない。星野源はモテるが星野源に似ている奴はモテない。ぐらい当然な感じ。
我々大人からすると"恐竜は絶滅した"というのが当たり前の認識なので、結構ビックリですよね。
ではなぜ長年の間、恐竜は絶滅したとされていたのか。まずはあの有名な"絶滅の原因"をおさらいします。
6千600万年前の中生代後期、地球に隕石が衝突しました。
その威力は、例えるなら広島に落とされた原爆の10億倍。
半径1000km(東京を中心とすると沖縄を除いて日本がすっぽり入るぐらい)にいた生物はその衝撃波だけで即死するレベルの超ヤバいやつでした。
当時の地球は現在よりも大陸間の距離が近かったため(1つの大きな島のようなイメージ)、被害は甚大。
続いてマグニチュード10以上(震度8の揺れが1時間以上続く感じ)の大地震。300m以上の大津波。吹き荒れる突風。火山の噴火等々…。
上に挙げた災害だけでも十分にヤバみがあるのですが、本格的に地球の生物を苦しめたのはここからでした。
隕石の衝突によって舞い上がった膨大な粉塵が空を覆い、太陽光を数ヶ月~数年間に渡り遮ってしまいました。
暗黒に包まれた地球。気温は10~20度下がり、プチ氷河期がやってきます。
光合成ができなくなった植物は枯れ果て、エサを失った草食恐竜が倒れていきます。さらにその草食恐竜をエサにする肉食恐竜も…。という流れで崩れていく生態系。
最終的には、それまで地球に存在していた恐竜・動物・昆虫・植物など、約80%の生物が地球から絶滅したと言われています。
全生物の80%ですから、ここで多くの恐竜が姿を消したことは確かです。
しかし、それはティラノサウルスなどの大型恐竜を中心とした話であり、頑張って生き残った恐竜達もいます。
それは、限られた資源の中でもあまりエネルギーを必要とせず生きられた《小型恐竜》。
現在の鳥の祖先です。
《大型恐竜の絶滅=恐竜の絶滅》
という当時の学者達の思い込みが、我々の知る恐竜絶滅の真実なのでした。思い込みて!
完全に絶滅したとされていた恐竜達でしたが、1995年のある大発見によって現代に蘇ることになります。
完全に恐竜と判断される骨格を持った上で羽毛を持つ《羽毛恐竜》が発見されたのです。
歴史的大発見!羽毛恐竜の化石。
背中にファファファーって羽毛が生えています。
羽毛恐竜が発見される以前にも、羽毛を持った恐竜の化石は発見されていましたが、
どちらかというと現代の鳥に近い姿で発見されてきた為、恐竜ではなく鳥類と分類されてきました。
当時、鳥類は爬虫類から直接進化したと考えられていたのです。
それまで鳥類のみの特徴とされてきた羽毛が生えたこの恐竜の発見で、
《鳥類=恐竜》
という説は一気に研究対象のトップに躍り出ます。
この説を支持してこなかった学者達も、
もし鳥が現代の恐竜であるのならば、現存する鳥達から恐竜の生態を推測することができるわけで、
それまで化石からしか得られなかった情報の幅がより広がることに期待を寄せたわけです。
実際、学者達が総力を挙げて研究を始めてからこの説がほぼ間違いないとされるまであまり時間はかかりませんでした。
最新のDNA研究も手伝い、細かい骨格の形状を含め、なんと100カ所以上の共通点が発見されたのです。
中でも、地球に現存するあらゆる生物の中で鳥だけが持っている《気嚢(キノウ)》という肺のシステムを恐竜が持っていたことが判明。
これが決定的な証拠となり、
《鳥類=恐竜》
が現在のスタンダードとなったのでした~。
~おわりに~
ご静聴ありがとうございました。
第1章でも述べましたが、恐竜が地球を支配していた期間は1億7000万年間と超長いので、進化が非常に複雑化しています。
解明されていることも多くありますが、わからないことも膨大にあって、
仮説と定説が入り混じって大変な情報量が飛び交っているのが今の恐竜学界隈なのでした。
つまり今回めっちゃ大変だったということです。
楽しかったからいいけど。
新元号、《恐竜》にならないかな。
参考にしたものリスト
《書籍》
『僕は恐竜探検家』
『大人のための「恐竜学」』
『ここまでわかった!恐竜のなぞ』
『そして恐竜は鳥になった』
『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』
『知識ゼロからの恐竜入門』
『やりすぎ恐竜図鑑』
『リアルサイズ古生図鑑』
『小学館の図鑑NEO 恐竜』
《映像作品》
『ウォーキングWITHダイナソー』
『プラネット・ダイナソー』
『ジュラシック・パーク 1~5』
《その他》
ラジオ『夏休み子ども科学電話相談』
博物館『国立科学博物館』